東北主要企業 ベア実施は2割
今春の労使交渉で、賃上げの動きが東北の主要企業にも及んでいることが8日、アンケートで分かった。
大手企業がベースアップ(ベア)で人材確保を図る中、回答した企業の2割がベアを実施。一時金の増額など待遇改善を検討している企業も2割を超えた。
賃上げについて「ベアと一時金増額の双方を検討」「ベアを実施」と答えた企業は計20.7%に上った。ベアは実施しないものの「一時金増額を検討」としたのは9.8%、「その他何らかの方法で行う」も13.0%だった。
円安の追い風などで業績が改善している製造業で積極姿勢が目立つ。NECトーキンは月額2800円のベアを決めた。7年ぶりの実施。主力のコンデンサー事業が好調で、収益が回復していることを受けた。
アイリスオーヤマは月額2000円。2年連続のベアで、担当者は「賃上げで地域経済の活性化を後押したい」と話す。トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)も月額2000円のベアを決定。昨年より800円上積みした。
他業種でもベアの動きは広まっている。システム開発のテクノ・マインド(仙台市)も2年連続で2000円の実施を決めた。同社は「待遇改善や社員のモチベーション向上のため」と説明する。
小売りは仙台三越が2010年の分社化後初の1000円のベアを決めた。自動車用品店の「イエローハット」を展開するホットマン(仙台市)も3年ぶりに実施する方針を固めている。
運輸業では半数の企業がベア実施に踏み切る。業界は深刻な人手不足に悩まされており、17年ぶりの実施を決めた企業の担当者は「少しずつでも待遇を改善していかないと採用で不利になる」と話した。
アンケートは東北の上場企業など123社を対象に3月中旬から下旬にかけて郵送で行い、96社から回答を得た。回答率は78.0%。
■東北主要企業「景気緩やかに拡大」6割
今後の景気見通しについて6割超の企業が緩やかに拡大すると予想した。2015年度の損益も6割超が増益基調を見込んだ。
景気見通しで「緩やかに拡大」と回答したのは60.9%だった。「横ばい」は33.7%で、「緩やかに後退」「後退」は計5.5%、「拡大」はゼロだった。
15年度の損益見通しは「大幅な増益」が1.1%、「増益」が21.7%、「増益基調で横ばい」が40.2%となった。「減益基調で横ばい」は14.1%、「減益」は7.6%だった。
昨年4月の消費税率引き上げが景気に及ぼした影響については「大きく減速した」が14.1%、「ある程度減速した」が52.2%に上った。減速を感じていたのは専門店・小売りで8割に及んだほか、製造業でも6割を超えていた。
社業で現在困っていることを尋ねた質問(複数回答)では、51.1%が「労働力不足」を挙げ、特に運輸は全社が人材不足に苦しんでいると答えた。「原材料の不足、高騰」は28.3%で、食品・外食や製造業で目立った。次いで「販路の縮小」が8.7%だった。