窓から外を眺めると雪がさわさわと降り出しました。ほんの少し積もりそうな雪です。
ここはみちのくです。
雪について繊細な日本人はたくさんの種類の雪を表現しています。
太宰治は『津軽』の冒頭に「津軽の雪」として次の七種類の雪を掲げています。
こな雪、つぶ雪、わた雪、みず雪、かた雪、ざらめ雪、こおり雪。
新潮社「日本文学全集28太宰治」の中の「津軽」冒頭に「津軽の雪 こな雪 つぶ雪 わた雪 みず雪 かた雪 ざらめ雪 こおり雪」とあり、その後に括弧して「東奥年鑑より」と記されていました。
小説の巻頭には“七つの雪”が「津軽の雪」として
あげられていますが津軽で「降る雪」としてあげられているわけではありません。
『雪には降雪と積雪の2種類があり、降雪で7種類、積雪で4種類ある』
7つのうち3つは積雪の状態を表すことばなのです。
津軽に7つの雪が降るというわけではないのです。
こな雪(粉雪)
つぶ雪(粒雪)
わた雪(綿雪)
みづ雪(水雪)
かた雪(固雪)
ざらめ雪(粗目雪)
こほ(お)り雪(氷雪)
また「津軽恋女」(作詞=久仁 京介 作曲=大倉 百人 唄=新沼 謙冶=大船渡出身)という歌の歌詞に
「津軽には七つの雪がふるとか♪~こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪 みず雪 かた雪 春待つ氷雪
」と在りますが実際に7つが全部降る雪という訳ではないようです。
言葉遊びでしょうか。
それにしてもいずれも日本独特の繊細さが表現されています。外国語にはないと思います。
古来より繊細な神経を持ち、一つのものにも静と動があり、見るときの感情によって呼び名を変えるというのは日本人の特質すべき民族性だと思います。
文学的にもそれらを使い分けることによりより的確な表現ができるというのも素晴らしいことです。
雪は北国の人間にとっては厄介なものですがこれらを楽しむ心のゆとりも持ちたいものです。
なごり雪=名残雪=忘れ雪 は春になってから冬の名残に降る雪。
(伊勢正三作曲だが イルカの歌声がより有名)
忘れ雪: 私を忘れないでねといっているかのように冬の最後または春先にすぐ消え去っていく雪。
英訳すると
lingering snow = 長引いている雪
snowfall at the end of the winter or the beginning of spring
=冬の終わりの降雪量または春の初め
とでもなるのでしょうか。
「なごり雪」や「忘れ雪」には冬が去っていく侘しさがこめられているのだと思います。
去り逝くものへの愛惜の念がこめられた言葉なのです。
日本人が持つ侘びさびの人生観なのです。素晴らしい。
其の外の雪を少し英語で考えてみましたがうまくいきません。
日本人の感性は素晴らしい。と思うのです。
・風花(かざはな) 晴れた日、風が吹き出す前などに、舞うように降る粉雪。北国で、本格的な冬の前触れとされる。
風花 snowflakes coming on the wind
・こな雪:粉のようにさらさらとした雪。こゆき。パウダースノー《季 冬》「―や朝より熱き女の身/澄雄」 「粉雪」は「和風(=おだやかな風)で吹上げられるもの」
粉雪 <粉>powder(y) snow
用例 外は粉雪が降っていた. A fine snow was falling outside.
・つぶ雪: 「ザクザクした粒状の雪」/粒のような雪。
・わた雪: 暖かくて降水量が多いところに降る。綿のようにふわっとした雪。
「綿雪」は「疾風(=速く吹く風)で吹上げられるもの」
・ぼたん雪: 気温が高い時に雪が集まってぼたんの花のように降る雪。
牡丹雪 <牡丹>
large flakes of snow
用例 牡丹雪が降っている. Snow is coming down in large flakes.
・たま雪: 冬の初めや終わりの暖かい頃に降る。たまの形。
・はい雪: 普通に降っている雪。灰のようにフワッと舞う。
・もち雪: たま雪やはい雪、わた雪が溶けかかった状態。
・べた雪: もち雪がさらに溶けて降る。団子のような感じ。
・みず雪: べた雪が雨に変化する状態。雨滴に近い。
「水雪」は「握れば水分が滴る」
・みぞれ雪: みぞれ状の溶けかかった雪。
・新雪: 積もったばかりの雪のこと。結晶の形が保たれている。
・こしまり雪: 新雪が少ししまったタイプ。降って数日たち、結晶が壊れて粒になっている。
・しまり雪: さらにしまった状態。スコップが立たないくらい固い。
・かた雪: 「歩いても足跡がつかないような圧雪」/堅雪。一度解けかかった雪が、夜間の冷えこみで凍りついて堅くなったもの。
・こおり雪: 「凍雪(こおりゆき)」は「濡雪(ぬれゆき)、濡締雪(ぬれしまりゆき)、粗目雪の凍結し た積雪」 固まって氷のようになった状態。
・ざらめ雪: 粗目雪(ざらめゆき)」は「雪の粒が再結晶を繰返し、粒子が肉眼で認められる積雪」
新雪やしまり雪が溶けて水を含んだタイプ。
・しもざらめ雪: しまり雪が冷えて雪の中に霜ができた状態。とても珍しいタイプ。
・こしもざらめ雪: しもざらめ雪の霜が小さいもの。
・あわ雪: 泡雪、沫雪。泡のように解けやすい雪。
沫雪(あわゆき)の、庭に降(ふ)り敷き、寒き夜を、手枕(たまくら)まかず、ひとりかも寝む
(万葉集第8巻) 大伴家持
・うす雪: 薄雪。少しばかり積もった雪。
・大雪: 激しく大量に降る雪。
・こごめ雪: 小米雪。細かい雪
・小雪: 少しの雪。
・しずり雪: 垂り雪。木の枝から落ちる雪。
・白雪: しらゆき。雪の美称。
・たびら雪: 春近くに降る薄くて大片の雪。だんびら雪。
・どか雪: 一時に大量に降る雪。
・友待つ雪: 次の雪の降るまで消えずに残っている雪。
・なごり雪: 名残雪。名残の雪。春になってから冬の名残に降る雪。
(伊勢正三作曲だが イルカの歌声がより有名)
忘れ雪: 私を忘れないでねといっているかのように冬の最後または春先にすぐ消え去っていく雪。
lingering snow = 長引いている雪
snowfall at the end of the winter or the beginning of spring
=冬の終わりの降雪量または春の初め
・なだれ雪: なだれて落ちる雪。
・にわか雪: にわかに降ってくる雪。
・ぬれ雪: 濡れ雪。水分の多い雪。
・根雪: ねゆき。雪解けの時期までとけずに残る雪。
・はだれ雪(まだら雪): 班雪。はらはらとまばらに降る雪。まだらになった残雪。(季語:春)
・初雪: その冬初めて降る雪。(季語:冬)
・春の雪: 春になって降る雪。牡丹雪になることが多い。(季語:春)
・ふすま雪: 衾のように多く積もった雪。
・ふぶき(吹雪、乱吹): 降雪に激しい風を伴ったもの。風雪。暴風雪。(季語:冬)
・べた雪: 水気の多い雪。
・万年雪: 山頂などに一年中解けずに残る雪。
・横雪: 風で横様に降る雪。
★太宰 治(だざい おさむ、1909年(明治42年)6月19日 - 1948年(昭和23年)6月13日)は、日本の小説家である。本名、津島 修治(つしま しゅうじ)。1936年(昭和11年)に最初の作品集『晩年』を刊行し、1948年(昭和23年)に山崎富栄と共に玉川上水で入水自殺を完遂させた。主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』。その作風から坂口安吾、織田作之助、石川淳らとともに新戯作派、無頼派と称された。
太宰 治 (だざい おさむ)
誕生
津島 修治(つしま しゅうじ)
1909年6月19日
日本の旗 日本 青森県北津軽郡金木村
(現:五所川原市)
死没 1948年6月13日(満38歳没)
日本の旗 日本 東京都北多摩郡三鷹町
(現:三鷹市)
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本
最終学歴 東京帝国大学仏文科中退
活動期間 1933年 - 1948年
主題
女性や落伍者の心理
古典や説話のオマージュ
人間の宿痾
文学活動 無頼派(新戯作派)
代表作
『富嶽百景』(1939年)
『走れメロス』(1940年)
『津軽』(1944年)
『お伽草紙』(1945年)
『ヴィヨンの妻』(1947年)
『斜陽』(1947年)
『人間失格』(1948年)
処女作「列車」
配偶者
津島美知子(1938年 - 1948年)
親族
津島文治
影響を受けたもの
芥川龍之介
泉鏡花
プロレタリア文学
井伏鱒二
佐藤春夫
共産主義
影響を与えたもの
自殺
純文学
三島由紀夫